asfdcの更新について

RIETAN-2000/2001Tを中性子回折データのリートベルト解析に用いる場合,それらに添付されている原子散乱因子,干渉性散乱径などのデータベース・ファイルasfdcを現時点では全面的に更新する必要があることがわかりました.これまで配布してきたasfdcには

V. F. Sears, "International Tables for Crystallographer," Vol. C, Kluwer, Dordrecht (1992), pp. 383-391.


に記載されている干渉性散乱径bc,非干渉性散乱断面積σi,吸収断面積(2200 m/s)σaが収録されています.一方,1999年に出版された第2版では,当該データは

V. F. Sears, "International Tables for Crystallographer," Vol. C, 2nd ed., Kluwer, Dordrecht (1999), pp. 440-448.

に置かれています.両者を比べると,bc,σi,σaの値が互いに異なっている元素がかなりあることがわかります.たとえばCaとMoにおけるbcの差は

1st ed.: bc(Ca) = 4.90 fm,bc(Mo) = 6.95 fm
2nd ed.: bc(Ca) = 4.70 fm,bc(Mo) = 6.715 fm

というように,かなり大きいです.

なお,多くの人に利用されているNISTの

Neutron scattering lengths and cross sections

では,International Tables,第2版と同じデータを提供していますが,TiとMnのデータだけ例外的に古いようです.第2版で更新されたTiとMnのデータは以下の通りです:

Ti: bc = -3.370 fm, σi = 2.63 barn,σa = 6.43 barn
Mn: bc = -3.750 fm

こういう事実につい最近気づき,取り急ぎasfdc中のbc,σi,σaを最新値に更新しました.ここで最新のasfdcを配布します:

現在配布しているRIETAN-2000パッケージ中のasfdcはすでに更新されています.RIETAN-2001Tパッケージ中のasfdcは,当面更新しません.なおRIETAN-2001TはMac版しかダウンロードできないようになっています.このようにTOF中性子回折用バージョンで手抜きに徹しているのは,RIETAN-2000のポリッシュアップにフォーカスしてためです.

新しいasfdcをお使いの場合は,必ずRIETANの出力中の値が正しいかどうかをチェックするようお願いします.