プログラム配布に関する問いかけ

ご存じのように,RIETAN-2000には最大エントロピー法プログラムmeedと連携したMEM/リートベルト解析およびMEMに基づく全回折パターン・フィッティング(REMEDYサイクルによる電子・核密度の改良)という先進的機能が組み込まれています.

MEM/リートベルト法は回折データのラフな可視化と構造モデルの修正に(それなりに)有効です.一方,MEMに基づく全回折パターン・フィッティングは電子・核密度分布の精密化に威力を発揮します.これはmeedの作者である熊澤紳太郎氏との密接な協力関係に基づいて開発した革新的機能であり,RIETAN-2000の最大の強みとなっています.詳しくはRIETAN-2000のページ,Refine Differentをお読みください.

われわれはSPring-8の物質研究所ビームラインに設置した粉末回折装置で測定した粉末回折データの解析により,MEM/リートベルト法に比べはるかに低いRBとR Fをしばしば与えることを確認済みです.この驚異的な国産技術を普及させていくのが,今後,私に課せられた最も重要な使命の一つだと考えています.MEM/リートベルト解析の段階に停滞せず,より高度な技法であるMEMに基づく全回折パターン・フィッティングを積極的に活用していくよう,声を大にして呼びかけていくつもりです.

MEM/リートベルト法を電子密度の決定に使うのは「邪道」です.過激な表現だと眉をひそめる方が多いかもしれません.しかし私には,リートベルト解析における構造モデルのバイアスが重くのしかかる解析法について,他に語るべき言葉がありません.

現在,meedのコンパイル・リンクずみ実行形式ファイルはRIETAN-2000の配布ファイルに含めておりません.UNIX/FreeBSD/Linux上でしたら,makefileを使って簡単にコンパイル・リンクできますが,GUIしか使ったことのない若手研究者や学生にとって敷居が高いと思われます.

一方,理学電機が最近発売したVisual RIETANにはmeedによるMEM/リートベルト解析と電子密度分布の可視化の機能が含まれています.これに刺激され,Windows 2000およびMac OS X上で直接動くmeedを作成することを現在,検討中です.1 GB以上のメモリーを積んだ最新のパソコンでしたら,大半の金属・無機材料をまずまずの速度で処理できるはずです.マルチプロセッサ機でしたら,さらに申し分ありません.

Fortranプログラミングに慣れていない人たちにとって,Mac OSやWindowsにmeedを移植するのは至難の業です.コンパイラーが高価(> \100,000)ですし,難解な分厚いマニュアルを一目見たとたんに尻込みすること,請け合いです.

最新版のmeedがRIETAN-2000との連携を念頭に置いて熊澤氏がマイナーチェンジしたものである以上,そのパソコン版を私が配布しても,けっして不自然でありません.しかし,これらのバイナリファイルをソースプログラムとともにフリーソフトウェアとしてホームページ上で配布するかどうかは白紙です.需要がほとんどないのに,手間暇かけて公開しても意味がないわけでして,どうしようか決めかねています.

そこで,インターネットを利用した調査を行うことにしました.本ページの訪問者でをぜひパソコン上でmeedを使いたいという方がおられましたら,お手数ですが,パソコン用meedの配布を希望するという旨のメールをお送り下さい.その際は,使用するプラットホーム(WindowsあるいはMac OS X),CPU,クロック,CPUの数(たとえばPowerPC G4, 500 MHz, 2; Athlon, 1 GHz, 1)も明記してください.希望者が十分多い(20名くらいがボーダーライン)ことが判明しましたら,配布に踏み切りたいと思います.Web上で公開せず個人あてに配布する可能性もあるので,希望者は必ずご連絡ください.