掲示板バックナンバー: 2001年


2月5日
Windows用RIETAN-2000とRIETAN-2001Tのバッチファイルを改善しました.CygwinのDLLもV1.1.8に更新しました.Windows用FTPサーバーのフリーソフトウェアTiny FTP Daemonを使って,MacとWindouws機の間でファイル転送し始めました.FTPクライアント・ソフトにはFetch 4.0(フォントサイズが変えられるようになり,細かい文字が読めなくなりつつある身には大助かりです)を使っています.ただし,テキストファイルのダウンロードが遅く,そのスピードアップにノウハウがあります.

2月7日
心待ちにしていたThinkPad A21pが昨日,届きました.CPUはモバイルPentium III(850 MHz),メモリーは393 KB,HDは32 GB,液晶ディスプレイは15インチ,1600×1200ドット(UXGA),OSはWindows 2000です.トラックポイントの使い勝手は最悪なので,IntelliMouse Explorerを接続しました.IEEE 1394カード経由で1.3GBのMDディスクドライブにも接続できます.これでWindows用RIETANの開発とテストが大いにはかどります.しばらくは環境設定とソフトのインストールに追われるでしょう.

2月18日
RIETAN-2000を更新しました.シミュレーションを行ったとき*.patにおいてピーク位置がすべてゼロになってしまうというバグと*.memに書かれる反射数が半分になる場合があるというバグを潰しました.また異なるドライブにファイルを置いたときでもきちんと動くようにしました.ただしWindows 95/98/Meでは,バッチファイルと*.insの置かれたドライブが異なると,RIETAN-2000.bat中に一行追加する必要が生じます.関連ファイルはすべて同位置ドライブに置き,IBM互換機の場合はWindows NT/2000を使うことを強くお奨めします.

2月22日
RIETANのユーザーには耳よりの話があります.実用的な観点からはRIETAN-2000-2000/2001Tのもっとも重要な機能といってもよいのに,現在まで実現していなかったこと,すなわちCIFの出力が可能になりました.さらにMac OSでは,CrystalMakerによる構造表示の自動化も実現しました.ExrietでRIETAN-2000を立ち上げると,解析終了後にいくつかのプログラムが逐次,実行され,入出力ファイルが表示され,最後にCrystalMakerが結晶構造を優雅に描いてくれます.この光景はなんともファンタスティックで,感動的ですらあります.面倒なマウス・キーボード操作を繰り返さずに済むわけですから,余計なギミックなどでは断固ありません.CrystalMakerのユーザーは随喜の涙を流すでしょう.


3月1日
ついにこのWebページから業績リストを追放しました.目障りだ,とっとと消え失せろ,というわけです.別に論文や解説の生産能力が落ちてきたからでなく,こういう第三者の関心を引くとは思えないのに定番となっている,あらずもがなの充填材はカットした方がいいと判断しました.これまでも自分自身の研究成果のデータベース代わりに使っていたに過ぎませんでした(誰も読まない年報の原稿を作成するのに利用).顧みると,他人のWebページの論文リストを見て,参考になったことはほとんど皆無です.実にすっきりしました.

3月6日
RIETAN-2000/2001Tの解析結果をIgor Proで表示する際に役立つ,かわいらしいマクロを書きました.ピーク位置を示す縦棒の上にカーソルを置き,このマクロを実行すると,当該反射のhkl,d,2θあるいはTOFがhistory areaに表示されます.またORFFEで結合角を計算するための命令(2番)を自動的に作成し,*.xyzファイルの末尾に追加するという機能も追加しました.ORFFEを2回続けて実行するだけで,結合角の一覧が得られます.

3月15日
金属材料技術研究所と無機材質研究所の統合と独立行政法人化に伴い,私の所属は4月1日から物質・材料研究機構 物質研究所に変わります.現在,RIETAN-2000はフリーソフトウェアとしてWeb上で公開していますが,4月以降も同様に配布できるの否かを心配している方が多いようです.現在は,ソフトウェアの配布について事実上,なんの規定も拘束もありません.そこで,泉 富士夫(公人)が自分の開発したフリーソフトウェアを泉 富士夫(私人)に渡し,泉 富士夫(私人)が個人的に開設しているWebページでそれを再配布するという形式をとっています.すでに公開済みのRIETAN-2000の無償配布は続行できるでしょうが,今後開発するバージョンをどう扱うことになるのかは,見通しが立ちません.心配が杞憂であることを祈るだけです.それにしても奇妙なのは,国立研究所,独立行政法人の如何を問わず,職務上開発したソフトに関する取り扱い規定が一切存在しないことです.もちろん特許については,きちんとした規定や担当部署があります.ORTEPやGSASの場合,国立研究所発行の報告書としてマニュアルが発行されていますが,そのような報告書を出すという仕組みもまったくありません.これがなにを意味しているかというのは明らかで,■■■■ …(以下,自主規制のため伏せ字).

3月23日
早稲田大学で開かれた日本セラミックス協会年会「セラミストのためのパソコン講座」ミニシンポジウムが昨日,無事終了しました.このミニシンポジウムは予想外の大盛況でして,かなり広い会場が満杯になり,立ち見の人がいたほどです.私はPower Mac G4+液晶ディスプレイを用い,自ら開発したRIETAN-2000をひっさげて講演しました.Acrobat ReaderによるスライドショーとRIETAN-2000と周辺ソフトの実演も順調にやり終えました.Mac OS版RIETAN-2000パッケージの真骨頂を披露できたと思います.RIETAN-2000のページ,Section 12, (i)において,その講演で用いたPDF(4.7 MB)を公開しますので,ぜひご覧ください.上記の実演はAppleScriptで書かれたExrietをダブルクリックしただけで,自動的に実行しました.大半の聴衆は目眩く思いだったことでしょう.RIETAN-2000のユーザーは,二つのスクリプトExriet(Mac OS)とDD.bat(Windows)のソースを一度眺めてみてください.FortranプログラムをGUI上で動かすためのノウハウを散りばめた,珠玉のスクリプトです.

3月25日
掘り出し物を見つけました.Windows 95/98/Me専用のUNIX系コマンドpushd.exeです.Sherlock 2で検索したら,ただちに見つけてくれました.このコマンドさえあれば,RIETAN-2000用のバッチファイルRIETAN-2000.batと入力ファイル*.insが異なるドライブに置かれていても,支障なく解析できるようになります.これで,RIETAN-2000.batにおける最後の懸案(2/18の記事参照)が一件落着したことになるので,実にうれしいです.2/22,3/6に記した改訂と合わせ,近日中に公開します.

3月30日
金材研と無機材研の統合と独立行政法人化に伴い,Webサーバは千現地区に一本化されます.個人のホームページは許可制となり,様々な制約が加わるにちがいありません.たとえば,本Webページのように日記めいたものやMacユーティリティーのような個人的趣味のWebページはもう許されないでしょう.マイクロソフトに対する悪口雑言も書けないかもしれません.しかし,一個人の専門的な研究のことしか記述されていない,堅苦しく無味乾燥なホームページへの訪問者が,どれだけいるでしょうか?これまで私のホームページは無機材研の悲惨を極めたWeb(大半のグループのホームページは2年間もほったらかしという体たらくでした)にとって明らかに過剰品質で,まったく釣り合いがとれていませんでした.ずばり,は●だめに鶴,いや,はき●めに怪鳥ですかね.組織が再編されたところで,■■■■ …(以下,自主規制のため伏せ字).そこで新組織のWebなんぞには見向きもせず,電光石火の早業で本Webページ(約25 MB)をhttp://homepage.mac.com/fujioizumi/index.htmlに移転しました.つまりアップルコンピュータのiToolsを活用し,iDiskのスペース100 MB($100/年)を個人でレンタルして,情報・ソフトを提供していこうというわけです.バナー広告など入りませんし,セキュリティーは万全なはずです.アップルコンピュータ本社(アメリカ)のWebサーバーを利用しているにもかかわらず,応答速度はまずまずです.サーバーや通信回線などのインフラが充実しているのでしょう.本WebページはMacで制作しているため,すべてのファイル操作をデスクトップ上で行え,実に便利になりました.たとえばファイルがバイナリーかテキストか,ということをまったく意識せずに,ドラッグ&ドロップでアップロードできます.ただし,iDiskの応答がのろいのにはイライラがつのります.お茶でも飲みながらアップロードするべきですね.組織から離れた個人のホームページに人を惹き付けるのは容易なことではありません.孤立無援でブランドを確立しなければなりませんが,内容から見て成算はあります.


4月1日
今日から勤務先の名称が物質・材料研究機構,物質研究所(Advanced Materials Laboratory, National Institute for Materials Science: AML/NIMS)に変わります.これからは電子メールアドレスをIZUMI.Fujio@nims.go.jp(公用),fujioizumi@mac.com(私用)というようにきちんと使い分けることにしました.公私混同を避けるため,仕事と関係ないメールには後者を使います.よろしくお願いいたします.

4月7日
私はMac用のメーラーARENA 2.0をAQUA Icons for ARENAで飾り,常時立ち上げています.4月からNIMS共通のグループウェアの利用を強要されているのですが,その中に含まれているメーラーは,機能,使い勝手,見栄え,動作の機敏さ,いずれをとっても,ARENAと比べたら月とスッポンです.いろいろご不満は多いでしょうが,とりあえずメーラーも使えます --- というくらいの代物です.掲示板などはともかく,朝から晩まで使いまくっているメーラーをわざわざ低レベルのソフトに切り換えるほど愚かなことはありません.そこで,すべてのメールをNIMSのメールサーバーからAMLのサーバーに自動転送することにしました.NIMSのメールサーバーは素通りするだけです.これで組織再編成に伴う受難を一つ克服しました.

4月11日
4月8日以降,NIMSからiDisk(このホームページのコンテントを格納)にアクセスできなくなってしまいました.ファイアウォールあるいはプロキシサーバーが邪魔しているためです.Mac OS標準のコントロールパネルであるネットワークタイムサーバーやソフトウェア・アップデートが利用できないくらいですから,底意地の悪いことでは筋金入りです.安全至上主義で,利便性など二の次,三の次です.大組織のネットワークとコンピュータを防衛するにはこうするしかないんでしょうし,一個人がいくら文句を言ったところで埒があくはずもありません.そこで,NIMSのネットワークには早々と見切りをつけ,休暇をとってiMac Special Edition(Blue Dalmatian,600 MHz G3)を買いに走りました.自宅でさっそくCATVインターネットACCSnetに接続したところ,なんのトラブルもなくiDiskが開けました.結局,アップル本社のWebサーバー,自宅でのコンテンツの作成・アップロード,Webの維持・運営にかかるコストは自己負担 --- というところに落ち着きました.Windows版RIETAN-2000のユーザーはPIETANに関するニュースをお読みください.

4月13日
お待たせしました.Mac OS用RIETAN-2000の最新版をリリースしました.2/22と3/6に記した新機能が盛り込まれ,各サイトを占める化学種,U,Ueqが出力されるようになりました(IUCrはisotropic atomic displacement parameterとしてB,BeqでなくU,Ueqを記述するよう勧告しています).Windows版は4/17夜から配布します.

4月17日
Windows用RIETAN-2000最新版の配布を開始しました.tee.exeの最新3/31バージョン版とpushd.exe(3/25の項参照)が含まれています.ただし,CrystalMakerテキストファイル*.cmtの更新はできません.これからは,複数回のリートベルト解析の自動実行を実現するとともに,Le Bail解析機能を改良していくつもりです.先週末は,iDiskがデスクトップにマウントできず(その後,復旧),Publicフォルダで亡霊(古い圧縮ファイル)と対面するという2種類の障害に散々痛めつけられました.4/11に記した新ネットワーク環境におけるアクセス制限といい,iDiskのかったるさといい,iToolsを利用した科学技術情報・ソフト提供の先駆者として辛酸をなめつつあります.

4月20日
急がば回れということで,profile cutoffを少しずつ変えながらLe Bail解析を繰り返すスクリプトをAppleScriptで作成しました.RIETAN-2000を1回実行するたびにJeditで入力ファイルを開き,強力な正規表現検索-置換機能を使ってその一部を書き換え,保存した後,実行結果ファイルの名前の後ろに解析番号を付けるという斬新なテクニックを新たに組み込みました.Jeditはスクリプト可能アプリケーションであり,アプリケーション間通信(Appleイベントのやりとり)を行えるため,AppleScriptのコードだけで事が済みます.この名人芸的スクリプトが一連の作業を楽々とやってのける様を眺めるたびに,AppleScriptはMac OSの至宝だということを実感します.天馬,空を行くといった感があります.これほど便利で,しかもシステム標準添付のツールを使わないのは,もったいなさすぎる!将来は同じ技法を駆使し,温度・圧力・化学組成を少しずつ変えて測定した一連の強度データのリートベルト解析を実行できるようにするつもりです.

4月25日
AppleScripによるJeditの制御は大成功でしたが,それで十分とは到底思えません.Jeditはシェアウェアですし,WindowsやUNIX上では使えません.そこで,Jedit用のコードに相当するものをMacPerlでコーディングし直すことにしました.MacPerlもJedit同様,アプリケーション間通信が可能です.Perlのようにフリー,メジャー,かつパワフルなプログラミング言語をマスターしておけば,今後ずっと商売道具として役立ちます.AppleScriptやコマンドプロンプトと組み合わせれば,鬼に金棒です.Perlに関する本を3冊買い込み,現在,老骨にむち打って習得に励んでいる最中です.

4月26日
Mac OSとWindows用RIETAN-2000を更新しました.Readmeの訂正,Mac OS用ORFFEのinsruction 2自動生成機能の不具合修正(Absoft Pro Fortranのバグを対症療法的に回避),ファイルとフォルダの再編成といったところが主な変更点です.どうも旧DECの流れをくむCompaq Visual Fortranに比べると,Absoft Pro Fortranの信頼性は今一つですね.実行形式プログラムとソースプログラムを完全に分離した結果,実にすっきした構成になりました.実行形式プログラムがすべてprogramsというフォルダに移ったことにご注意ください.そのように変わったことを意識して操作しないと,障害が発生する恐れがあります.

4月28日
CygwinがVer. 1.3.1へ,MacPerlがVer. 5.6.1a1(αバージョン)へと,メジャーバージョンアップを果たしました.ともに,まだバグの巣窟だそうですが,RIETAN-2000との組み合わせではまったく問題ありません(注:Cygwin 1.3.Xは後に障害を発生させていることが判明し,6月5日からVer. 1.1.8に戻した).今日,RIETAN-2000のLe Bail解析機能におけるWilson統計による積分強度推定がバグっているのを発見しました.これでよく今まで動いていたなあ,と思わず感心してしまいました.自動連続Le Bail解析も行えるように改造したExirietも合わせて,バージョンアップしておくことにします.なお,Exrietを使用した場合,RIETANの出力が*.lst,ORFFEの出力が*.dstに変わったことに留意してください.

4月30日
一連のLe Bail解析を自動化する(AppleScript + Perl)スクリプトが完成したので,勤務先のPower Mac G4(500MHzX2)と自宅のiMacでベンチマークテストを実施してみました.Power Mac G4が2分33秒,iMacが2分21秒という意外な結果が出ました.RIETAN-2000を動かすには,この可愛らしいiMacで十分 --- ということです.しかし,液晶ディスプレイや増設メモリーなどまで含めると約100万円は投じたG4機(昨年夏購入)が10万円台のG3機にあっさり敗退してしまうとは,喜ぶべきか,悲しむべきか...iMac,恐るべし.USBポートが実質3基,IEEE 1394ポートが2基,10/100BASE-T Ethernetポートが1基,標準装備されているのだから,拡張性は十分すぎるくらいです.パソコンの留まるところを知らないスピードアップと過剰性能ぶりがくっきり浮き彫りになりました.


5月9日
Le Bail解析において各相のRFを出力しないように改訂したMac OS/Windows用RIETAN-2000をアップロードしました.これまでsit/zip形式に圧縮したRIETAN-2000を配布してきましたが,今日からtgz(= tar.gz)形式のアーカイブに切り換えました.異論が多いかもしれませんが,GPLに則ったフリーソフトウェアであるRIETAN-2000の理想と精神にふさわしい圧縮形式です.Mac OS版はbin-tar-gzipで圧縮しています.このアーカイバは,商用ソフトであるStuffItに替わって,今後RIETAN-2000の配布以外にもどんどん活用していくつもりです.Windows上ではCygwinパッケージに含まれているtarとgzipで圧縮しています.専用のバッチファイルをクリックするだけでrietan2000w.tgzとして冷凍してくれます.

5月16日
5月20〜27日にかけて台湾を車で一周し,台湾大学(台北),成功大学(台南),東華大学(花蓮)の大学院で講義してきます.台湾を旅するのは2度目ですが,ここのところ風邪気味で,蒸し暑さが心配です.帰国後には,単行本原稿の閲読地獄が待ちかまえています.なんとか,乗り切らねば...

5月28日
昨晩,台湾から帰国しました.思ったほど暑くありませんでした.台東で交通事故に巻き込まれましたが,幸い怪我はまぬがれました.レンタカーが破損したので,花蓮から台北は列車で移動しました.面白かったのは,花蓮郊外の鯉魚潭(雨月物語に「夢応の鯉魚」という怪異小説があります)という湖水です.案内してくれた大学の先生方の発音では,「リータン」としか聞こえませんでした(実際は「リーユータン」というらしいです).モーターボートで一周しました.最近,台湾の有力大学に採用される若手研究者はほとんどアメリカで学位を取得した人だそうです.もちろん皆,英会話はnative speakerなみで,まるでアメリカにいるような感じがしました.

5月30日
所内のホームページからISIのWeb of Scienceにアクセスできることに気づき,さっそく1981年以降の自分の論文がどの程度引用されているか,調べてみました.100回以上引用された第一著者の論文が2報(164,122回),共著論文が4報(187,140,111,109回),50回以上引用された第一著者の論文が8報,共著論文が19報でした.もっとも引用されている私の文献は,まちがいなく"The Rietveld Method"という単行本(Oxford University Press, 1993)でRIETANについて述べている第13章でしょう.これを加えれば,三つの文献が100回以上引用されていることになります.引用回数の非常に多い論文の数に基づく研究機関のランキングで無機材研のようなミニ研究所がトップテン入りして話題になりましたが,不肖,私も多少貢献していることがわかりました.無機材研は特許料収入も抜群に多かったらしいです.とすると,その何倍も大きい国立研は■■■■ …(以下,伏せ字)ということになりはしないでしょうか.


6月2日(あまりにも長くなったので,段落に分けました)

本ホームページを現在のサイトに移転してから早3ヶ月過ぎました.週日にはまず100回以上はアクセスがあります.週末や祝日には訪問者が激減するので,1日当たりの平均アクセス回数は100回弱くらいです.ただし,表紙以外のところに直接アクセスする人も多いでしょうから,実際のアクセス回数は100を越しているのは確実です.100回以上引用される論文はごくまれ(5月30日の項に記したように,私自身が執筆した論文の場合2報にすぎません)ですが,一日あたり100人以上が訪れる科学技術関係の個人ウェブサイトも珍しいのではないでしょうか.頻繁に更新されており,有用な情報・ソフトが手に入り,しかもリピーターが大勢いなければ,ここまで到達しません.相当な手間をかけているにもかかわらず訪問者が少ないのでは目も当てられませんから,望外のアクセス数には満足しています.

民間企業の方がかなり訪問されていますが,外界から遊離した,独りよがりな研究に埋没していない証拠で,喜ばしい限りです.税金で養ってもらっており,大学の教官と違って教育の義務を免れている以上,直接・間接に社会に役立つ仕事をしなければ面目が立たない,浮世離れした研究は大学にまかせておけばいい --- というのが私の持論です.産業・経済が疲弊しきり,気勢の上がらない現代日本では,悠長なことなど言っておれない,ということです.本ホームページが研究成果の社会への還元を指向しているのは言うまでもありません.

なお,8割以上の訪問者がWindows上で閲覧しています.マイクロソフト嫌い,Windowsアレルギーを公言している私のホームページの訪問者でさえこういう状況なのですから,Mac離れは相当深刻です.大学の先生方の話では,最近の学生はほとんどWindows機しか買おうとしないそうです.なにしろ格安で,しかもこの不景気ですからね.将来の日本を担う学生諸君に敬遠されているようでは,Macが今後,先細りなのは間違いありません.もはや隙間市場を相手に小銭を稼ぐしかないのです.こういう悲しい現実をつくづく認識したからには,Mac OS用RIETAN-2000の開発・配布はもはや打ち切る,という決断しか残されていません(嘘).

先日,ある女性から,「泉 富士夫の粉末回折情報館」はつまらない,以前の素晴らしかった「泉 富士夫のハチャメチャ情報館」を復活してほしい,と要望されました.先代のホームページは「化学と工業」や「現代化学」でも紹介した,先駆的かつ画期的なホームページでしたが,タイトルからも想像がつくように,破天荒かつシニカルなところが目立ったことは否めません.常識から逸脱し,半ば冷静沈着,半ば狂気の世界をアナーキーな気分で彷徨しないと,RIETAN-2000のような巨大かつ複雑なソフトは到底,開発できないので,エド・ウッド的雰囲気に満ちたウェブサイトになるよう意識的に努めました.いい塩梅のおっちゃんになり果てて,「こぢんまり,しけ込んで」いたら,波及効果の大きい有意義な仕事などできず,重箱の隅を楊枝でつつくような安直な業績稼ぎに走ったことでしょう.確信犯ですね.プログラミング至上主義の旗を掲げたドンキホーテ的猪突猛進の果てに失ったもの・人・チャンスは多いですが,まったく後悔していません.

もっとも,私の旧ホームページの強烈なインパクトと現実の私には相当なギャップがあります.2年前,とある大学の女子学生からメールが届きました.リートベルト法の講習会で私の講義を聴講したのだそうですが,事前の予想と違って「見た感じはジェントルマンでした.」と書かれていました(笑).いやはや,縄帯でも締めて毒舌を吐きまくっている男だと思い込んでいたのでしょうか.

私は人前で話すのが大の苦手でして,たぶん脂汗を流して縮み上がっていただけでしょう.声こそ人一倍でかいですが,相当な口べたです.講演・講義の日が近づいてくると,精神的圧迫感がぐんぐん高まり,体調が悪くなります.オリジナルな研究成果を口頭で発表したのは,近くには1999年に1回(英語),その前が1987年に1回(YBCOの結晶構造に関する緊急臨時講演で,たった5分間でした.それも,自主的に講演したのでなかったような記憶があります)という惨状でして,この十数年,自発的にはほとんど口頭発表していません.かくのごとく,「したくないことはしない一生であれ.」という山田風太郎先生(ご冥福をお祈りいたします)のお言葉を金科玉条にして馬齢を重ねてきましたが,ときたま舞い込んでくる講演とか講義の依頼を謝絶するようになったら,研究者としての存在意義が問われると同時に,声だけでなく態度もでかいと非難されかねませんから,致し方なく引き受けてます.

余談(といったら全部が余談)ですが,Apple社で働くことに興味のありそうな人たちに送られる同社主催のパーティー招待状"Come to the Apple Open House"には,なんと

You have to be crazy to work at a place like this.

と明記されていたという話を以前,どこかで読みました.つまり,こういう場で働くからには,あなたはクレージーでなければならない,ということです.同社の"Think different"というスローガンも,この文言と同じ意味のことを別な表現で述べているのでしょう.スゴすぎる会社ですね.

ヘルマン・ヘッセの「荒野の狼」は,放浪の詩人ハリー・ハラーが魔法劇場でモーツァルトと出会い,芸術や人生について語り合うところで終わります.ブラームスとワグナーの音楽をモーツァルトが辛辣に批判します.この劇場にも「常人お断り,狂気の人にかぎる」と貼り札されていました.

閑話休題,昨年3月に開かれた日本化学会春季年会において,「インターネットによる化学情報の提供と交換」というタイトルで講演するよう依頼されました.45分間にもわたる特別講演のために,再利用などまず無理なOHPシートをゼロから作成せざるを得なかったのには泣かされました.例によって気の進まない,その講演で,「泉 富士夫のハチャメチャ情報館」の入口のスナップショットも示しましたが,タイトル中の「ハチャメチャ」という部分にPhotoshopでモザイクを施さざるを得ませんでした(ちなみに,Photoshopではフィルタ → ピクセレート → モザイクという操作で,選択部分にモザイクをかけることができます).いったい,化学会の長い歴史の中で,モザイク入りの図を使った講演を平然とやってのける畸人が未だかつて現れたことがあるでしょうか?さすが傍若無人,恐いもの知らずの私も,こりゃーヤバいぞ,こんな世間をなめきったような,ふざけたことを繰り返していたら,社会的に葬り去られるのではないか,と自問するようになりました.3月の時点でRIETAN-2000をコードフリーズした以上,もはや奇を衒い続ける理由は失せていました.

それ以来,全面的にホームページを刷新する機会をひそかにうかがっていましたが,RIETAN-2000を8月にリリースしたころ,ほぼ同時進行で全面改装しました.時間を節約するため,RIETAN-2000については英語のWebページしかこしらえませんでした.ただし,脳天気で自由奔放な「プリシラ」的雰囲気が漂っている表紙のデザインには愛着があるので,そのままとしました(注:私はけっしてオカマではありません).こうして,毒気に満ちた奇態な文章が延々と続き,RIETAN-97βがいったいホームページのどこからダウンロードできるのか,見当もつかないという混乱を極めた状況は雲散霧消しました.

現在のホームページが味も素っ気もなく,地味で,堅苦しすぎるという指摘は,まったくもってその通りで,弁解の余地がありません.しかし,(ほぼ)常識人に戻ってしまったからには,今後も現在の堅実路線を貫いていくつもりです.いくら面白みが消え失せたといっても,大半のアカデミックサイトよりはずっとましだからこそ,アクセス数が順調に伸びているわけです.ティム・オライリーによれば,ウェブサイトは情報アプリケーションあるいはインフォウェアとでも呼ばれる,まったく新しい種類のアプリケーションにほかならないそうです.ということは,多くの研究者の創造性を支援するフリーソフトウェアを配布し,しかも訪問者の多い当ウェブサイトは一種のキラーアプリケーションとみなせます.自らは有用な情報をまったく発信せず,ひたすら情報の収集に精を出すホームレスに甘んじていないところを評価してくださるようお願いします.

なお「泉 富士夫のハチャメチャ情報館」は一種の文化遺産としてHD中に冷凍保存され,安らかに眠っています.その主要部分を陳列したミュージアムを開館するという案は,いかがでしょうか.顰蹙を買うだけでしょうか.

電光ニュースで流した内容に少しずつ書き足していったら,こんなに長くなってしまいました.とりとめもない無駄口にご静聴いただき,ありがとうございました.

6月3日
Mac OS・WindowsRIETAN-2000を更新しました.ポスドクのAlexeiに協力してもらい,3相のX線リートベルト解析の雛形ファイル(英語版だけ)を追加しました.この雛形には彼がモスクワ大学在学中に書いた論文で用いたネタを用いました.またCygwin1.dllがVer. 1.3.2に更新されています.お昼前に雛形の作成をAlexeiに依頼したのですが,昼食後にすぐさま渡してくれたのには驚きました.本当に勤勉かつ優秀で,いつも涼しい顔でテキパキ仕事を片づけていきます.昨年6月から私のところで働き始めたのですが,1ヶ月後に論文を1報書き上げ,7月末に仙台で開かれる国際会議では一人で3件発表し,内1件は20分の口頭発表です.しかも,一人で車を運転して行くのだそうです.さらに9月にはミュンヘンで開かれるICNSで発表します.それ以外にも,執筆済みの論文が3報,私の机の上でスヤスヤ眠っている,という恐るべきパワーを発揮し,私をタジタジにさせています.論文のチェックが遅すぎる,と抗議されたのは,初めての経験です(論文を書くのが遅すぎる,と怒鳴りつけたことは何度もありますが).かなりの数の漢字もいつのまにやら読めるようになっている模様です.恐れ入りました,と頭を下げるしかありません.なにを頼んでも嫌な顔をしたことはなく,しかもプライベートなことでは絶対,私に頼ろうとしません.私のように,「苦労は買ってでもするな.」,「明日できることは今日やるな.」をモットーとするぐうたら人間には,もったいない.オーバースペックです.彼に要望したいのは,"Dear Professor Fujio Izumi:"とメールの冒頭に書くのと,Excelでリートベルト解析パターンをプロットするのを止めてほしいことだけです.

6月5日
一昨日に更新したばかりのWindowsRIETAN-2000を急遽また更新しました.Cygwin1.dll,Ver. 1.3.Xに深刻なバグがあることがわかり,急遽,Ver. 1.1.8に戻すとともに,ORFFE.batとlst2cif.batを修正しました.Cygwinの最新版が不安定だという警告は目にしていたのですが,teeと組み合わせて使っているだけなので,大丈夫だと思い込んでいました.現実には,*.lstに一行おきに空白が入ってしまうという症状が出ていました.このため,lst2cifは正常に動かなかったはずです.なぜか,クレームがまったく届かないので,油断していました.Windows版のユーザーはこの最新版に入れ換えてくださるよう,お願いいたします.Cygwin1.dllはtar,gzipと組み合わせてWindows用RIETAN-2000のアーカイブ作成にも使っているので,バグ入りだと深刻な問題が生じる恐れがあります.当面,安全第一でいきます.

6月12日
Mac OSとWindows用RIETAN-2000を更新しました.lst2cifのバグを退治するとともに,入力ファイルの雛形を改訂しました.lst2cifの改善に伴い,Windows用結晶構造作画プログラムBalls & Sticksでlst2cifの出力したCIFを読めるようになりました.親切にも,作者自身が多相試料のCIFも読み込めるようにしてくれました.Balls & Sticksは掘り出し物です.商用ソフトを凌ぐ部分さえある,この秀作が無料だというのだから,驚きです.貧乏な研究者や学生を支援するためWindows版の開発に集中しているとのことで,科学技術計算ソフトの開発・提供を通じて社会的貢献を目指すという精神において,RIETAN-2000と相通ずるところがあります.OpenGLの真骨頂を発揮した素晴らしい三次元グラフィックが楽しめ,遊び心にも富んでおり,しかも着々と機能が増強されつつあるので,Windows用RIETAN-2000と併用すれば,錦上花を添えることになりましょう.結晶学者にも役立つようなツールに育ててもらいたくて,私もSung,Ozawaの両氏にいろいろ注文を出し続けています.熱振動の異方性を表現したいときはORTEP-IIIがありますし,不定期に税金(バージョンアップ料金)を納めさせられる,目の玉が飛び出るほど高価な商用ソフトウェアの存在意義が今や問われています.このケースに限らず,現在利用しているRIETAN-2000の周辺ソフト(Igor Pro, ATOMS, CrystalMaker, Noesys, …)はじっくり開発期間をかけ,一つずつ無料ソフトウェアに切り換えていきたいです.貧乏人には実質的に無縁のシステムなのですか,と言われたら,立つ瀬がありません.すべての人々にわけへだてなく自分のソフトを使ってもらうには,解凍ソフトから可視化ツールに至るまで,商用ソフトをことごとく排除したシステムの構築を目指し,自己の信じる道を突き進むしかありません.すでに世に出ている優れたフリーソフトウェアをできるだけ活用するよう心がけますが,プラットホームに依存する場合はぜひ自主開発したいです.拡張に拡張を重ねたRIETAN-2000をこれ以上肥大成長させると,一般ユーザーにとっては「地獄からやって来た解析ソフト」と化す恐れがあります.RIETAN-2000にはしばらく手を触れず,むしろ周辺ソフトを充実させていくのが賢明です.Balls & Sticksに触発され,この壮大かつ無謀な商用ソフト追放(けっして「撲滅」ではありません)計画を遂行していく覚悟は徐々に固まりつつあります.一研究者が科学技術系ソフト販売会社に一泡吹かせることができるかどうか予想がつきませんが,とにかく実践あるのみです.

6月17日
Windows用RIETAN-2000を更新しました.GNUのファイル表示ユーティリティーlessで出力ファイル*.lstと*.dstを閲覧するようDD.batを改良しました.もちろんCygwinが背後で支えています.lessの豊富なキーボード・コマンドを使いこなせば,MKEditor秀丸などのエディターで眺めるより,はるかに操作性がよくなります.閲覧中に'h'キー(ヘルプ)を押せば,lessで使えるコマンドの一覧が見られます.複数ファイルの閲覧や正規表現による検索までこなせます.RIETAN-2000のWindows版の開発にあたっては,bzip2, cp, less, mv, rm, tar, teeなどのGNUユーティリティーのお世話になっています.といっても,本格的なCygwin環境の構築はさぼり,Ring Serverからダウンロードしたcygwin1.dllといくつかのコマンドをパスの通ったフォルダ(C:\Winnt\system32)に置いているだけです.bashすらインストールしていません.Windows NT/2000のコマンドプロンプトはshellの機能を多少取り入れているので,大きな不満はありません.

6月19日
Windows用RIETAN-2000を更新しました.less に-MlSというオプションを付け加え,readme_Win.txtを少々手直しし,圧縮フォーマットをtar.bz2形式に変えただけです.tar.bz2の方がtgzよりかなり圧縮率が高くなるので,しだいにサイズが大きくなってきている配布ファイルを圧縮するのに有効です.RIETAN-2000パッケージを圧縮した場合,tgzが1,693,727バイト,sitが1,567,206バイト,tar.bz2が1,465,240バイトなのですから,驚異的な圧縮能力です.短い間にzip → tgz → bz2という圧縮形式の変更につきあわされたユーザーが誠に気の毒だとは思いますが,こういう新しもの好きの性格は息を引き取るまで変わりそうもありません.ところで,東北大金研の大山研司さんから日本中性子科学会のホームページが完成したという知らせが届いたので,さっそく相互リンクを張りました.ゼロから立ち上げたのですから,相当大変だったはずです.ご苦労様でした.

6月21日
原子散乱因子,干渉性散乱径などのデータベース・ファイルasfdc中のデータを一部,更新しました.と言うと,自分でやったように聞こえるでしょうが,実際にデータを打ち込んだのはAlexeiです.昨晩,頼んだら,今朝には出来上がっていました.ただし,まだできたてのほやほやなので,RIETAN-2000/2001Tの配布ファイル中のasfdcはまだ古いままです.

6月24日
急ピッチで機能を増強しているBalls & Sticksに負けじと,商用ソフト追放活動の第2弾(第1弾はlessによる出力ファイルの閲覧)として,Igor Proを標的に選びました.リートベルト解析の過程で頻用する必需品なのですから,これは最重要の関連プログラムです.しかし,Ver. 4.0X日本語版が16万円というアンビリーバボーな価格設定ですから,よほどお金が余っている方以外にはもはや薦められません(ただし,WaveMetrics自身による英語版の販売価格は$550で,良心的です).移植の手間を一切かけずにMac OS 9/X(Carbonアプリケーション),Windows 95/98/NT/2000やUNIX/FreeBSD/Linuxなどで安定に動き,Igor Proと同様に作画のためのスクリプトを作成でき,ほとんど覚えきれないくらい豊富な機能をもち,種々の設定がTinkと同様に単純明快に変更でき,しかもEPS, HPGL, tgif, pngなど主な形式のグラフィック・ファイルのほとんどを出力可能,という欲張った仕様に設定しました.別に大言壮語しているわけではありません.Igor Proには及ばないところもありますが,本質的な部分では引けを取りません.tgif形式のファイルを作成すれば,tgifで図形自身を修正・加工できます.一昨日に開発に着手したのですが,実働約3日でグラフィック出力の部分はあっさり実現してしまいました.すでにMac OS 9.1とWindows NT/2000上でリートベルト解析パターンが見事に表示されることを確認しました.こんなに簡単にプロットできる,とわかっていたら,Igor Proなんぞに頼らなかったことでしょう.後はRIETAN-2000に作画用のファイル*.patを出力するルーチンを追加するだけでして,すぐ片づきます.このような急速な進捗の種明かしは,新バージョンの公開までお待ちください.


7月4日
最近はMac OSとWindows用RIETAN-2000の改良に全力を傾注しており,UNIX/FreeBSD/Linux版の配布は止めています.ユーザー数がきわめて少ないこと,g77のバグ(SELECT CASE関係)が長いこと退治されなかったこと,無料のFortran 90コンパイラがないことです.つい最近GCC 3.0がリリースされましたが,この中に含まれているg77でRIETAN-2000がコンパイル・リンクできるという情報が入りました.これで,ようやくUNIX/FreeBSD/Linux版の配布を再開する気になりました.気長にお待ちください.

7月8日
Mac版RIETAN-2000の最新版をアップロードしました.asfdcが更新され,gnuplot用の*.patファイルを出力するようになりました.つまり,6月24日に思わせぶりに書いたグラフ出力ルーチンとは,なんのことはない,知る人ぞ知るgnuplotのことだったのです.凝った図の作成には向いていませんが,*.patファイルの表示・印刷に関する限り,gnuplotがあれば十分です.一画面で見える程度の小さなファイルを多少変更するだけで,素早くグラフが作成でき,Igor Proよりよほど能率的です.gnuplotは様々なグラフを作成できますから,覚えておいて損はありません.Macファンの私としては,gnuplot for MacintoshがCarbonアプリケーションなのが,とくに気に入っています.マウスを用いたグラフ操作やカラーによる塗りつぶしなど 現在欠けている機能も,次期バージョンに追加されるでしょう.過去にリートベルト法を普及させるべくインドネシア,インド,台湾,中国,韓国,メキシコを旅したことがあり,高価な商用ソフトなど買える研究者はこれらの国にほとんどいない,ということは十分認識していました.これで,肩にずっしり食い込んでいた荷がようやく一つとれました.なお,gnuplotに関する日本語の入門書としては

海上 忍,黒川弘章,「これだけでできるLaTeX実践活用ガイド」技術評論社 (2000), 第5章.

が比較的新しく,50ページにわたってgnuplotの初歩が丁寧に書かれています.Web上で読めるtutorialを提供しているサイトとしては,一も二もなくNot so Frequently Asked Questions(日本語・英語)を推奨します.天晴れ,よくぞこれほどまで --- というくらい充実したホームページです.

7月11日
Mac版に引き続き,gnuplot によるグラフ作成機能を追加したWindows版RIETAN-2000の最新版をリリースしました.gnuplot 3.7.1+1.2.0はこのパッケージに含まれています.もちろんasfdcも更新しました.昨年8月以来,RIETAN-2000のポリッシュアップに奮闘努力した結果として,readmeがますます肥大してきました.次第にマニアックかつ複雑怪奇になっていき,一般ユーザーには敷居が高くなりつつあるのではないか,と危惧しています.このため,Perl が必要となる自動Le Bail解析機能の公開は見合わせています(Windos版ではまだ実現していないこともありますが).今回のgnuplotとの結合でもそうでしたが,使い方を英語でわかりやすく説明するのが,なにしろ大仕事です.ただ,私はPerlやgnuplotのようなフリーソフトウェアの名作をもっと多くの人たちに使ってもらいたいと心から願っており,自作のRIETAN-2000とこれらと接続するのを名誉なことだと思っています.

7月15日
Carbonアプリケーション化したRIETAN-2000のアルファ版が一応動くようになりました.Absoft Pro Fortran v7.0 for OS9のインストール直後には,RIETAN-2000をコンパイル・リンクできるようにファイルが配置されておらず,stdfil.fとstdfil.f90がバグっていた他,マニュアルの記述もいいかげんで,Absoftのサポート係と何度かメールをやり取りした末,ようやくこの段階に到達できました.このコンパイラのテストユーザーとして私が孤軍奮闘し,人柱となっているという感じです.Mac OS 8.6以降とMac OS Xのclassic環境上で利用できます.Mac OS X上ではAQUAインターフェースの外観となるはずです(未チェック).ただし,CarbonLibを含むようになったMac OS 8.6以降でないと走りません.G3およびG4マシンでテストしたところ,まだ安定に動くというにはほど遠く,がっかりしました.公開は当分,見送りです.

7月20日
東京理科大の中井 泉さんと私が編著者となって,「粉末X線解析の実際:リートベルト法入門」という書籍を朝倉書店から出版する予定です.この本について私自身や出版社に問い合わせが多数届いておりますので,ここで執筆・編集の進捗状況をお知らせしておきます.現在,原稿の執筆と査読が大詰めの段階に入っており,中井さんと私がねじりはちまきで査読に取り組んでいます.来年2月初旬までには刊行できるでしょう.出版後に東京(2月4〜6日に化学会館を予約済みです)で,この本をテキストとする講習会を二つ開催する予定です.売り物は,三段階に分けて,初学者が結晶学の基礎を学べるよう工夫してあることです.RIETAN-2000の利用を前提として書かれていて,未だにまとまったマニュアルが提供されていない現状を考慮すると,RIETAN-2000のユーザーには必携と言えましょう.この本の編集を担当されている斉藤さんと中井さんは,ともに故長島弘三先生の研究室の先輩と後輩の間柄だそうです.私も長島先生に学位論文の主査となっていただきましたので,偶然とはいえ,縁というものを実感します.思い起こせば,長島先生が入院されていたとき,中井さんから,いずれ一緒に見舞いに行きましょう,と声をかけていただきました.その心づもりでおりましたら,急にご様態が悪化され,天国に召されてしまいました.私はあの世では別なところにいくに決まっていますから,もう二度と御目にかかることもないでしょう.長島先生には,生前,多大なご迷惑をおかけしましたので,この本の出版がせめてもの罪滅ぼしになることを願っています.

7月22日
UNIX用RIETAN-2000を久しぶりに更新しました.GCC 3.0中のg77でコンパイル・リンクできるはずです.ただし,私はCompaq Fortran for Tru64 UNIX Alpha Systemでテストしており,実際にFreeBSD/Linux + GCC 3.0でチェックしたわけではありませんので,もしコンパイル・リンクに失敗しましたらご一報ください.ただRIETAN-2000とORFFEを単純に動かすだけ,という簡素きわまりないパッケージです.ネットワーク接続したMacやWindowsからtelnetで走らせ,これらのマシンを他の作業のためにスムーズに使うことだけを想定しています.実はWindows用RIETAN-2000中のwindos.f90で'USE .....'という行をすべて注釈とし,'\'を'/'に変えれば,そのままUNIX専用のallunix.f90のソースプログラムとなります.後は他の*.f90とdatetime.c(これはUNIX用配布ファイル中にあります)とともにコンパ イル・リンクするだけです.今後,UNIX版のアップデートが滞ったら,そうしてください.なお,Mac OSバージョンも改訂しましたが,こちらはreadme_MacとExrietをほんの少し書き換えただけです.

7月26日
CarbonアプリケーションのRIETAN-2000が私のマシン上では安定に動くようになりましたので,RIETAN-2000: Carbon Applicationという臨時のWebページでβ版としてリリースします.テストユーザーになってもよい,という方は使ってみてください.なにか障害が発生しましたら,ご連絡ください.


8月1日
以前,2年間ポスドクとして私のところで働いたRuben A. Dilanian(ロシア科学アカデミー固体物理研究所)を特別研究員として採用しました.Object Pascal, Delphi, C/C++, Fortran, Java, Perl, Paradox, dBase, SQLの9カ国語が話せます.WindowsとLinuxのプログラム開発に習熟しています.結晶学については,「空間群のシンボルだけから同価位置の座標を導き出せる」ほどの実力があります.さっそく商用ソフト追放活動の一環として,新作ソフトの製作に着手してもらいます.今年中には動くようにしたいです.彼は以前,lst2cifという渋いFortranプログラムを作ってくれましたが,今回は,大向うをうならす,派手で見栄えのするCプログラムの作成を要請しました.プロデューサー兼デザイナーは私,プログラマーは彼です.OpenGLを縦横無尽に活用した,三次元的に思考するための道具です.結晶質固体を研究する人々の創造性を拡大し,結晶学の教育に貢献するばかりでなく,エンターテインメント性も具備した,ゲーム感覚で使えるソフトの完成を目指します.RIETAN-2000との密接な連携を計るのは言うまでもありません.学術・教育・娯楽の三拍子揃った本格的なソフトということになると,安直なVRMLなんぞに頼っていたら,中途半端なものになってしまいます.完全に白紙の状態から,画面に直接描画するソフトを書き起こすべきです.語るに落ちてしまいましたね.もう中身は察しがつくでしょう.ただ,他に類を見ないような,すばらしい隠し球も用意してあるので,楽しみにしていてください.自慢の種は,GLUTを利用するため,Windows・UNIX用のソースプログラムが完全に同一だということです.土台がUNIX(Mach + FreeBSD)で,OpenGLが標準で組み込まれているMac OS Xでも,やはり動くでしょう.ソースプログラムは,プラットホームに依存しない3Dグラフィック・プログラムの開発を目指す人にとって,格好の手本になるはずです.ほとんど商用科学技術ソフトに共通する欠陥は,ソースプログラムが付属していないことです.つまり自己の利益のために,科学知識の自由な共有と配布を拒否し,ブラックボックス化しているのです.中で何を行っているか分からないのでは,安心して使えません.商用ソフトのベンダーに一泡吹かせるためにも,ソースプログラムの公開は欠かせません.

8月25日
依然として「粉末X線解析の実際」の編集にかかり切りで,他になにもできない辛気くさい日々が延々と続いています.もう一人の編著者である中井 泉さんも出張先のドイツ,トルコ,エジプトからつぎつぎにメールを送ってきています.遅くとも今月中には片を付けなければなりません.非常に実践的で,実際に粉末X線回折とリートベルト法を利用している人に喜ばれ,重宝がられる本になるのは確実です.宣伝とアフターサービスのためのホームページも設けるつもりです.ところで,CarbonアプケーションのRIETAN-2000がMac OS X上では動かないという報告が3件届きましたが,いずれも,Classic環境下で実行しなかったのが原因でした.Carbonアプリケーションなのに,Classicウィンドウ内でしか動かないというのも妙な話ですが,Absoft Pro Fortran v7.0 for OS 9の仕様でして,致し方ありません.つい最近リリースしたAbsoft Pro Fortran for OSXを買え,ということのようです.GCC 3.0でRIETAN-2000がコンパイルできるようになった今,今後,Mac OS X用ソフトの開発にどこまでコミットしたらいいのか,真剣に悩んでいます.

8月27日
単行本の編集,一刻も早く片づけたいのですが,気ばかり焦って,遅々として進みません.相当,消耗しています.忍の一字です.一方,隣でCプログラミングにこつこつ励んでいるRubenは,楽しそうに仕事しています.時々,製作中の3Dグラフィックソフトを見せてもらっては,いろいろ注文をつけています.これくらいですね,現在の楽しみは.


9月2日
9月8日から18日までドイツとオーストリアに出張します.3度目のドイツはさておき,今回の楽しみは,なんといってもウィーンです.ポスドクのAlexeiと一緒に,ミュンヘンからザルツブルグ,リンツ経由で列車に乗って行きます.もちろん,観光のためでなく,ウィーン大学を訪問するための旅なのですが,折悪しく週末に訪問することになってしまい,幸か不幸か,頼まれていた講演はできなくなりました.ウィーンというと,私にとって格別の響きがあります.私はMacだけでなくモーツァルトのenthusiastなのです.中でも,最晩年に作曲された「ピアノ協奏曲第27番」,「魔笛」,「クラリネット協奏曲」は三種の神器とみなしています.うまく自分の言葉では表現できませんが,いずれも「優しい黄金の厳粛」に包まれた彼岸の音楽です.モーリアックの言葉 --- 「道に迷った天使は,遠ざかったしあわせをいかにして得るか,そのすべをもはや知らないのである.私はモーツァルトの晩年の作品に,私が《神への非難》と呼んだ物,心ない人類のただなかで,いったいなんのため,誰のためにやってきたのかと心に問うている迷い子の憤りが聞こえるように思った.…」 「ピアノ協奏曲第27番」の第2楽章や「アヴェ・ヴェルム・コルプス」には,このモーリアックの言葉がぴたりと当てはまります.放浪の天才数学者ポール・エルデシュは神様のことをS.F.と呼んでいたそうです.「スプリーム・ファシスト」(最大の独裁者)の略です.世界中で戦争,テロ,虐殺,飢餓が絶えないのに,それをただ見過ごしているだけの神様というのはなんと残酷な存在だろうか,という意味が込められているようです.恐らく,モーリアックやエルデシュは「カラマーゾフの兄弟」の中で,イワンが神を責める有名な一節を読んでいたのでしょう.

若かりしころ,「魔笛」は,カール・ベーム指揮のレコードをすり切れるほど聞き,実際にオペラを観劇しに行ったほか,ベルイマンの映画まで見ました.そのレコードのライナーノーツに,「これはなんと人を幸福にしてくれる音楽だろう.清らかな水に入っていくようだ.」というベームの述懐が書かれていたのを,今でも覚えています.ベルイマンの映画では,パミーナが自ら命を絶とうとしているとき,三人の童子が気球に乗って雪の中を舞い降りて来たという記憶があります.いくら北欧生まれの監督だからといって,雪を降らすというのは脱線しすぎだと思います.

このほかの音楽では,ピアノ協奏曲23番の第2楽章,交響曲41番(ジュピター)の第4楽章,クラリネット5重奏曲の第1楽章はとりわけ素晴らしいと感じます.神品というのはこういう曲を指すのでしょう.

9月6日
RIETAN-2000のMac OS,Windows,UNIX版とPDFファイルNotes.pdf,rdj2000.pdfを更新しました.といっても,ピーク位置シフト関数の式が間違っていたのを訂正しただけのマイナーチェンジです.Mac OS版には,ついにCarbonアプリケーションも含めました.これについては,RIETAN-2000: Carbon Application というWebページで詳しく紹介しています.そこをよく読んでから,お使いください.また,Mac用配布ファイルはbin-tar-gzip 2.0.1によりtbz(= tar.bz2)形式で圧縮してあることにご注意ください.最新バージョンのbin-tar-gzipでないと,解凍できません.bz2形式で1,404,407バイト,sit形式で1,515,013バイトですから,商用ソフトのStuffItより圧縮率で優っています.なお,Exrietに含まれていたJedit4とのアプリケーション間通信(どこかがバグっているようです)部分を削除したため,Exrietの安定性が増しています.

9月18日
ドイツ,オーストリア出張中はずっと天気が悪く,晴れたのは1日だけでした.ミュンヘンに到着した晩には,びしょぬれになってしまいました.日本と比べ10度以上,気温が低く,晩秋のような雰囲気が漂っていました.終始,セーターとジャケットが必要でした.私たちが泊まっHotel Alexander(ウィーン大学横)はシューベルトの生家や彼がパイプオルガンを演奏した教会のすぐ近くでした.モーツアルトが4年間住み,「フィガロの結婚」を作曲した家(フィガロ・ハウス)を訪れましたが,別にどうということはありませんでした.同時多発テロの影響を心配しましたが,空港での搭乗手続きは平常通りでした.

9月30日
私のホームページはアップルコンピュータのiDiskサーバー上に置いてあります.一昨日の夜以来,なぜかiDiskを開けなくなってしまいました.最近,iDiskのサーバーがWebDAVプロトコルに対応したことを知っていたので,GoliathというWebDAV用ファイル送受信ソフトでアクセスしてみました.結果は大成功で,なんの問題もなくiDsikがオープンできるだけでなく,つくば市のCATVインターネットACCSnetとカルフォルニアのiDiskサーバー間の通信とは思えないほど俊敏です.幸い,GoliathはMac OS 8.1以上で走ります.4月以来iDiskの劣悪な応答速度と不安定さにはほとほと手を焼いてきましたが,ようやく快適なファイルのアップロードが実現し,感動しました.しかし,どうしてGoliath(ダビデに殺されたペリシテ人の巨人戦士)というんでしょうか.


10月10日
Mac OS X 10.1を注文しました.しかし,新しい環境を構築するのには多大な時間がかかります.Mac OS Xに本格的に移行するべきかどうか,迷っています.まだキラー・アプリケーションが揃っていない現状を考慮すると,半年から一年後に使い始めるのが賢明なような気がします.

10月11日(あまりにも長くなったので,段落に分けました.また,特筆大書したい文を赤・ゴシック文字で表示しました.論文や解説ではこういう芸当はできません.)

Mac OS用RIETAN-2000を更新しました.9/20にアップデートされたAbsoft Pro Fortran v7.0 for OS 9でRIETAN-2000(Carbonアプリケーション)をコンパイル・リンクするとともに,Readme_Macを少々手直ししました.

今後はRIETAN-2000の配布ファイルを必ずウィルスチェックするようにします.なにしろ,ウィルス入りのメールが頻繁に送られてきますので,油断できません.ただし,今のところ,勤務先のウィルスチェック・フィルターにすべて捕捉されてます.

これまでMEMに基づく全パターン・フィッティング(whole-pattern fitting based on MEM)と呼んできた手法を,今後,MPF(MEM-based Pattern Fittingの略)法と呼ぶことにしました.

リートベルト法は結晶構造を構造パラメーター(原子座標,占有率,原子変位パラメーター)で表現します.いわゆるMEM/リートベルト法は,リートベルト解析における構造モデルのバイアスが大なり小なりかかった"観測"構造因子をMEMで一度だけ解析します.この手法は,従来からよく利用されてきた"観測"構造因子のフーリエ合成における解析手段をMEMに置き換えただけであり,とくに目新しいアイデアというわけではないのです.あえて直截なる物言いをすれば,単なる選手交代で精密な電子密度が導き出せるほど,粉末回折データの解析は甘くないというのが私の感想です.

MEM/リートベルト法の深刻な欠陥について,歯に衣着せず指摘しておきましょう.たとえば,X線リートベルト解析では通常,等方性熱振動近似で構造を精密化します.異方性熱振動を無視したリートベルト解析の結果を利用して求めた"観測"構造因子に多かれ少なかれ誤差が入り込むのは言うまでもありません."観測"構造因子といっても,所詮は観測ブラッグ反射強度と構造因子Fcから推定した値であり,Fcにはリートベルト解析で精密化した構造パラメータから計算した値を用いるからです.言い換えれば,MEM/リートベルト法で処理する"観測"構造因子は純然たる実測値でないのです.MEM自体はモデルフリーですが,MEM/リートベルト法は構造モデルに多かれ少なかれ依存します.前者ばかりを強調し,後者については頬被りを決めこんではいけません.Fcが結合電子や伝導電子の寄与をほとんど無視して計算されていること,"観測"構造因子の誤差までFcを使って計算していることも指摘しておきます.構造モデル寄りのバイアスがかかった"観測"構造因子とその誤差をMEMで解析した結果得られる電子密度が,構造モデルの影響を受けるのは自明のことです.仮に"観測"物理量に対するこのバイアスの寄与を忠実に反映した電子密度が得られないようだったら,MEMの解析能力が十分でないということになり,その存在意義が問われかねません.

構造モデル寄りのバイアスという致命的な欠陥を孕むMEM/リートベルト法を電子・核密度分布の決定に使うのは,よほど対称性が高く,単純な構造の化合物でない限り,安直かつ邪道です.一時しのぎの便法と言ってよいでしょう.その用途は不完全な構造モデルの修正に留めなければ筋が立ちません.

MEM/リートベルト法が最適構造モデルの構築に有効なことには,一も二もなく同意します.しかし,リートベルト解析の専門家としては,詰めが甘く,重大な欠陥をもつMEM/リートベルト法が電子密度解析法として我が国で蔓延るのを見て見ぬ振りをするわけにはいきません.私のような粉末回折,とくにリートベルト法の専門家が我関せずと放置しておけば,「裸の王様」を黙って眺めていたことになってしまいます.そういう事なかれ主義は,自分のこれまでの粉末回折,とくにリートベルト法の専門家としての実績・知識・プライドを台無しにすることにほかなりません.

MPF法は結晶構造を電子・核密度で表現し,MEMで改良された構造因子のパターン・フィッティングへの導入を通じて,実質的に電子・核密度を精密化します.構造パラメーター以外のパラメーター(プロファイル・バックグラウンド・格子パラメーター,尺度因子など)を精密化した後,MEMが導き出した構造因子で観測ブラッグ反射強度を再分配することにより"観測"構造因子を各サイクルで改善します.このため,MEM解析とパターン・フィッティングの繰り返し(REMEDYサイクル)の進行とともに,リートベルト解析における構造モデルからのバイアスは減少していきます. 電子・核密度分布の決定という舞台の上では,MEM/リートベルト法はMPF法の「前座」に過ぎない --- と私が主張しているのはこのためです.もっとも,ドリフターズとビートルズほどの差はありませんが ...

われわれは,10月2・3日に名古屋で開催された日本結晶学会2001年度年会において,SPring-8のBL15XUに設置した世界でもトップクラスの分解能を誇る粉末回折装置で測定した放射光粉末回折データのMPF法による解析を通じ,電子密度分布の決定におけるMEM/リートベルト法に対するMPF法の優位性を実証した,と発表しました.われわれは,たとえ日本で断トツに高分解能のX線回折データを解析したとしても,MEMで計算した構造因子に固定したパターン・フィッティングを少なくとも1回は実行して,実測ブラッグ反射強度を再分配するとともに構造と無関係なパラメータを精密化し,その結果得られた"観測"積分強度をMEMで解析して電子密度を決定するのが必要不可欠であることを明らかにしました.MEM/リートベルト解析どまりでは不十分な証拠に,MPFによりR因子は目につくほどに向上し,電子密度は大なり小なり変化します.

反射の重畳が激しくなるほど,回折装置の分解能が低下するほど,原子配置の不規則性が増すほど,共有結合性が増すほど,非局在電子の数が増すほど,REMEDYサイクルは威力を発揮するはずです.すなわち,REMEDYサイクルの御利益は物質や回折装置に依存するわけです.したがって電子密度分布を決定しようというのなら,MEM/リートベルト解析後に必ずMPFを実行し,R因子や電子密度の変化を調べるべきです.もちろん結果として,ほとんど効果がなかった,ということはあり得ます.たとえば単純な構造をもつイオン結晶の高分解能放射光粉末回折データを極低温で測定したならば,MPFの有り難みは薄れるでしょう.しかし,われわれが通常興味を抱くほとんどの化合物の場合,実際に解析してみなければ,MPFがどの程度,功を奏するかはわかりません.リートベルト解析で採用した構造モデルが最終電子密度に及ぼすバイアスを子細に検討したこともなく,どんな物質を扱うときも常にMEM/リートベルト解析止まりというのでは,プロフェッショナリズムに欠けた素人芸に過ぎません.仏作って魂入れず,怠慢かつ粗雑の誹りを免れません.

MEM/リートベルト法と比較し,原理的に健全で,技術的に優位に立つ電子密度決定法(一種の構造精密化法)であるMPF法の存在感をアピールしていくには,適切で簡潔な名前をつけるという戦略が功を奏すると思われます.今後はMPF法という名称を普及させていくつもりです.この命名に応じて,RIETAN-2000のWebページをかなり書き変えました.

MEM/リートベルト法信奉グループに付和雷同するだけの輩が多数おり,何を言っても糠に釘,蛙の面に小便,という唖然とするような現実の前では,私がMEM/リートベルト法を完膚なきまでに叩き伏せ,粉末法による電子密度解析のブレークスルーとなる代案(MPF法)を提唱したところで,押し留められるはずもありません.モグラ叩きに終わるのは目に見えています.しかし,それで一向に構わないのです.大切なのは,MEM/リートベルト法による電子密度解析のお寒い実態とmethodologyとしてのあぶなっかしさについて裏の裏まで知悉した私が,自己の信念に従って警鐘を鳴らし続けると同時に,MPF法を着実に磨き上げ,三次元可視化のソフト(8月1日の項参照)とともに分け隔てなく提供していくということです.創造的破壊 --- 多くの人々の支持を集め,共感を得るにはそれしかありません.

そもそも,MEMによる"観測"構造因子の解析が遅すぎるから,MEM/リートベルト法のような手抜き以外の何物でもない解析法が横行するのだと思います.MEM解析の劇的な高速化を図らなければ,将来への展望は開けません.それが実現すれば,電子密度の決定はもとより,不完全な構造モデルの修正にまでMPF法が利用できるようになり,MEM/リートベルト法なんぞは自然消滅してしまうでしょう.

意外に思われるかもしれませんが,MEMプログラムを書くのは比較的簡単です.アルゴリズムが単純なため,どんな空間群にも使える一般的なプログラムでなければ,学生でも作れます(実際に相当な数のソフトが過去に作成されたと聞いています).リートベルト解析プログラムや現在製作中の3D visulaizationプログラムの比ではありません.Meedに取って代わる新世代高速MEM解析プログラムの開発に自ら取り組むべきなのかもしれません.

IUCrCommission on Powder Diffraction(CPD)が発行しているCPD Newsletterのリートベルト解析特集号(No. 26)に寄稿をするよう要請がありましたので,上記の私の主張を交えながらMPF法について詳述し,放射光粉末回折データの解析例三つを紹介し,"Beyond the abilities of Rietveld analysis: MEM-based pattern fitting with synchrotron X-ray powder diffraction data"と題して投稿することにしました.この号には,リートベルト法の創始者であるRietveld先生も執筆されるようです.今年の末には発行されるでしょう.興味をおもちの方はぜひお読みください.

秋の霜のような厳しい文面が続きました.9月2日にモーツァルトについて語り,本日はビートルズの名前が飛び出しましたので,気分を変えるために,ここでにバッハ関連の史実を記しておきましょう(なぜバッハなのか,分かるかな?).1789年4月18日にモーツァルトはバッハの弟子兼後継者であるトーマス教会の合唱長ヨハン・フリードリヒ・ドーレスを前触れもなしに訪問しました.彼は1時間にわたって多数の聴衆を前にオルガンを無料で演奏しました.ドーレスは彼の演奏に狂喜し,その師,老バッハが再生したと信じた,と伝えられています.

こういうように,昔は大作曲家かつ大演奏家は珍しくありませんでした.一介の三流プログラマで,人前に立つのが大の苦手,自作ソフトをほとんど活用しようとせず,その上,大半の機能の使い方を忘れてしまっているF. I.氏とは大違いです.

10月16日
今日から自宅で利用しているCATVインターネット接続サービスACCSnetが 下り回線最大2 Mbps、上り回線最大512 kbpsの通信速度に変わりました.体感スピードが相当上がっており,喜んでいます.数年後には光ファイバーを各家庭に敷設して高速ネットサービスを提供するFTTH(fiber to the home)による通信が当たり前になっているのでしょうね.

10月19日
私の趣味の一つに辞書(書籍,電子辞典)収集があります.もちろん実際に活用しています.昨日,英辞郎,Ver.48.5のCD-Rが郵送されてきました.英和辞書だけでも96.5万語を収録しています.ランダムハウス英語辞典にのっていない最新の単語が多数収録されています.さっそくWindows機にインストールし,試用してみました.英語をめぐる最近の大きな話題は,なんといっても“Show the flag”誤訳問題です.国会答弁によれば,小泉首相は,アーミテージ国務副長官の発言“Show the flag”を文字通り,日の丸が翻っているところを見せてほしい,という意味だと解釈していました.そこで,検索ソフトのPDICを立ち上げ,“show the flag”と打ち込んでみたところ,リアルタイムでその慣用句にジャンプし,「主張[見解・立場]を明らかにする」という訳を表示してくれました. 言い換えれば,「旗幟鮮明にする」ということです.英辞郎には多くの新語が含まれています.たとえば,“Osama bin Laden”がかなり長い説明とともに収録されていました.これがたった2,200円(Web検索は無料.@niftyのメンバーは無料ダウンロード可能)とは,驚きです.揚げ足を取るのは好きでありませんが,一国の外交政策や自衛隊の活動に関わる重大な発言ですから,字句の解釈はきわめて重要なことです.首相官邸は,今後,英語の達人をアドバイザーとして採用するとともに,英辞郎を緊急導入すべきだと勧告したいです.なお,JammingDicToolというユーティリティーでファイル変換し,インデックスを作成すれば,Mac用のJammingでも英辞郎が検索できるようになります.

注:後でふと思ったのですが,「日の丸が翻っているところを見せてほしい」という解釈は,本来の意味を知っていたのに,故意に違う意味に解釈した可能性もあります.そうだとしたら,相当な知能犯です.

10月23日
Windows専用リートベルト解析パターン作図プログラムRietPlot 2000のホームページが立ち上がった旨,作者の大橋直樹氏からメールをいただきました.Googleで存在を知った他の三つの作図ソフトとともにRIETAN-2000のWebページでリンクを張っておきました.

10月28日
RIETAN-2000のMac OS・Windows・UNIXバージョンをすべて更新しました.Ba2+イオンの原子散乱因子を計算するための係数が一つ間違っていたのを修正しただけです(実害はほとんどありません).Windows・UNIX版配布ファイルの拡張子がtbzに変わったことにご注意ください.これでようやくファイル圧縮フォーマットが統一されました.


11月5日
Compaq Visual FortranがVer. 6.6に無料アップグレードしましたので,Windows用のRIETAN-2000,ORFFE,lst2cifをコンパイル・リンクし直し,アップロードしました.Ver. 6.6 ではIntel Pentium 4向けの最適化が可能になっていますが,いかんせんマシンをもっていません.どなたかテストしていただけるのなら,喜んで実行形式ファイルをお送りします.

11月6日
Intel Pentium 4 用に最適化したrietan_pn4.exeをRIETAN-2000のWebページでダウンロードできるようにしました.誰からも要望がないので,押し売りに近いです.rietan.exeに改名し,programsフォルダ中のPentium用rietan.exeと入れ換えてください.Pentium 4のマシンを所有している方は,無事動いたかどうか,そしてスピードアップしたかどうか,ご報告いただければありがたいです.

11月11日
X線分析講習会「粉末X線リートベルト解析」の参加要項ができあがりましたので,講演と講習のお知らせでPDFファイルを公開しました.この講習会では,近く校正刷が届く予定の「粉末X線解析の実際 --- リートベルト法入門」(朝倉書店,約200ページ,予価4,800円)をテキストとして配布します.RIETAN-2000のユーザーやリートベルト解析に新たにチャレンジしたい方は奮ってご参加ください.今日,いつのまにやらファインダ上でiDiskにアクセスできるようになっていることに気づきました.といっても,Goliathでアップロードする方がはるかに速いことに変わりはありません.なお,このホームページの容量は24.2 MBにまで肥大していることがわかりました.

11月12日
独田地獄斉の*.patファイル表示ソフトRIETVIWEがv0.1.1にバージョンアップされた旨,ご本人から通知がありました.RIETAN-2000のWebページ,Sect. 15 (d)でリンクを張ってあります.現時点では最速の*.pat表示ソフトではないか,と自慢しておられました.ところで,本名・性別・年齢・所属・住所不明,アニメ・ゲーム狂にして,フリーソフトウェアのプログラマー,超オタクっぽいこの御方ですが,「独田地獄斉氏」とお呼びする方がよいのでしょうか.敬称と調和がとれませんし,「オサマ・ビンラディン氏」と言うのと同じような違和感が ...独田地獄斉のホームページの表紙に馬鹿でかく表示されている「NYO!」,Software Laboratoryに書かれている「シズマ管」という謎めいた言葉は,何を意味しているのでありましょうか?アニメあるいはゲーム分野では常識となっている言葉なのでしょうか?興味は尽きません.末筆ながら,逆リンク集で,長いこと「毒田地獄斉」という不吉な名前でリンクを張り続け,申し訳ありませんでした.断じて故意ではありませんでしたが,お詫び申し上げます.

11月14日
Cygwinなしに動くWin32プログラムtee.exeless.exeを見つけました.これらのフリーソフトウェアの存在に長いこと気づかなかったのは,実にうかつでした.rietan.exe・tee.exeの並列実行とless.exeによる.lst,*.dstの閲覧に,Cygwinはもはや不要です.Cygwin1.dllとtee.exeの最新版を組み合わせると,RIETAN-2000やORFFEの出力ファイルに空白行が一行おきに挿入されてしまうという不具合が発生し,困り果てていました.メモリー大食い(ファイルサイズ:615 KB)で,バグが多く,しかもコマンド実行速度を遅くするCygwin1.dllを使わずにすむようになったわけで,Windows版RIETAN-2000にとって大きな前進です.ただ,Windows 98/NT以外のOSではチェックしていないので,当面,Cygwin利用バージョン(11月5日アップロード)と並列で,上記のtee.exeとless.exeを含めたアーカイブファイルrietan2000w2.tbzを配布します.しばらく様子を見て,障害の通知がなければ,Cygwin利用バージョンの配布を停止するつもりです.万一,不具合がありましたら,ご報告ください.この他,rietan2000w2.tbzでは,DD.bat中でless.exeのオプション(正しくは-MIS)が間違っていたのと,雛形ファイルCimetidineE.ins中に全角文字が4つ残っていたのを修正しました.

11月15日
AMD Athlon用に最適化したRIETAN-2000実行形式ファイル(rietan_k7.tbz)をアップロードしました.またCarbon版RIETAN-2000を11月13日に更新されたAbsoft Pro Fortran v7.0 for OS 9でコンパイル・リンクし直しました.

11月21日
Cygwin を必要としないWindows版RIETAN-2000を配布し始めてから1週間が経ちましたが,障害の報告はまったくありません.そこで,Cygwin抜きRIETAN-2000パッケージにPentium 4とAthlon専用RIETAN-2000を含めたアーカイブファイルrietan2000w.btzを今日から配布します.Cygwinを駆逐できたことの意義は大きく,祝杯をあげたい気分です.なお,Athlon用RIETAN-2000は入力ファイル読み込み中に異常終了してしまうという報告がありました.Athlon搭載のマシンをお持ちの方はテストしていただけませんか.締め切りの近い原稿2件と「粉末X線解析の実際」という書籍の校正(編著者なので,200ページ近く,全部チェックする義務あり)を抱え,青息吐息です.両原稿とも,まだ1行たりとも書いていません.なかなか書き始めようという気になりません.とにかく,あらゆることにスロースターターなんです.いったん仕事を始めると,結構速いんですが.困りましたね(人ごとみたいですが).

11月23日
風邪のため体調がひどく悪いです.しかし,力を振り絞って,2002年2月刊行予定の「粉末X線解析の実際 --- リートベルト法入門」のゲラを校正するとともに,その書籍のサポートページを新設しました.発売前からサービス開始という常識破りの発想が,いかにも私らしく意表をついていて,実に気に入っています.科学技術関係の書籍というのは,スペースに制約があって,専門的事項に関して微に入り細にわたり記述するのは到底無理です.それに技術の進歩が急激で,数年もすると次第に古ぼけてきます.そこで,Webの力を借りて,より完全なものに仕立てるとともに,賞味期限を大幅に延長しようというわけです.理工学書に限らず,ほとんどすべての書籍は書きっぱなし同然,後は野となれ,山となれというのが当たり前ですから,私の意欲的な試みは,必ずや好評を博するでしょう.気をつけなくてはいけないのは,力余って,書籍に書いたことを再録してしまうという禁じ手は絶対使わないことですね.誰も買ってくれなくなってしまいますから.

11月27日
RIETAN-2000配布ファイルをすべて更新しました.CimetidineJ.insとCimetidineE.insにおける炭素サイトが多すぎたのを改めました.R因子が以前と比べかなり下がります.実は現在,校正中の単行本の中でCimetidineの化学組成(C10H16N6S)を書く必要が生じ,それを調べている過程で気づきました.実害はなかったでしょうが,こんな重大なミスを長いこと見過ごしていたのは,かなりきまりが悪いです.今回,Cimetidineは理化学辞典にものっているくらい有名な医薬品だということを初めて知りました.Athlon用の実行形式ファイルは,正常に動作しないという報告があったため,取り去りました.また,やはり校正中に“多目的パターン・フィッティングシステムRIETAN-2000ユーザーガイド”中の式(33)にマイナスの符号が欠落していた誤り(RIETAN-2000を使用する分には実害なし)に気づきましたので,これを修正するとともに,活字になった文献を書き直しました.

11月29日
Mac OSおよびWindows用RIETAN-2000中のlst2cif(RIETAN-2000の出力ファイルをCIFに変換するソフト)を更新しました.構造パラメーターの精度が非常に高い場合に,標準偏差の部分が正常に出力されなくなるバグを除去しました.lst2cifをお使いになっていない場合は,ダウンロードする必要ありません.「インターネット情報」の最後の項目として,非公開ページというのを追加しました.これは,私からパスワードを受け取った人だけがアクセスできるWebページでして,メールに添付するには大きすぎるファイルを特定の人に渡したり,共同研究者間のコミュニケーションを計ったりするのに使います.プライベートな目的に使うこともあるでしょう.パスワードの機能は簡単なJavaScriptで実現しています.有馬あきこさんのおかげです.各ページの最下部に置かれたHome,Next,Backのボタンは,大分前に彼女のホームページから頂きました.重ね重ねありがとうございます.ところで,このホームページの背景をどこから調達したか,ご存じですか.表紙も含め,ほとんどは佐藤慶子さんのKaleidoscopeから頂戴した素材をPhotoshopで加工したものです.誰かが「佐藤慶子さんは日本のグラフィクス界の女王だと思っています.」と書いていましたが,私は「佐藤慶子さんはこのホームページの恩人です.」と,お礼を言いたいです.


12月6日
昨年執筆した理学電機ジャーナルの記事“多目的パターン・フィッティングシステムRIETAN-2000ユーザーガイド”中,「3.1 Le Bail法の概要と特色」の5,6,7番目の段落をかなり書き直しました.恥ずかしい話ですが,一部,リートベルト解析後の"観測"積分強度計算に関する記述が混ざっていました.どこかからcopy & pasteしてきた文章を手直しするのを忘れたのかもしれません.不注意をおわびいたします.

12月9日
「粉末X線解析の実際」サポートページで,目次と執筆者を記したPDFを閲覧できるようにしました.MacユーティリティーのWebページにおいて,付録としてWindowsユーティリティーについても述べていますが,このたび,この箇所をかなり補筆しました.といっても,相変わらず,アイコン・バージョン抜きのままです.Windows機のユーザーはとくにMacを必要としませんが,MacユーザーはWindows機も必要になることが多いです.結晶学関連ソフトにはWindowsでしか動かないソフト(たとえば,CROMERPowderX,ICSDの検索ソフトretrieve)が多いですし,第一,Windows用RIETAN-2000を開発するのに否が応でも使わざるをえません.その過程で,Windows用ユーティリティーを多少収集し,戯れました.その成果がここにあります.

12月12日
「粉末X線解析の実際」のゲラ(編著者による再校分)が続々,送られてきます.2段組で約200ページだと相当な分量です.17日締め切りの依頼原稿,論文の審査2件,ポスドクの論文の添削,その他いろいろ,を抱え込んでいて,パニック状態です.当分,せわしない日々が続きます.ところで,先月中ごろから本ホームページのアクセス件数が一段と増しています.平日は必ず100件以上のアクセスがあります.実に喜ばしいことですが,更新を怠ると,とたんに激減するでしょう.しかし,そろそろ,ネタぎれになってきました.

12月17日
日本結晶学会誌特集号の依頼原稿と単行本の再校,1〜3章を本日,相次いで送付しました.これでやっと一息つけましたが,単行本の校正はまだ先が長いです.1日あたり1章ずつくらいのペースで処理していかねばなりません.結晶構造と電子・核密度の三次元可視化プログラムのWebページを新設しました.少しずつ充実させていくつもりです.このWebページといい,「粉末X線解析の実際」サポートページといい,出てもいない書籍・ソフトのホームページを作るのは異様に感じられるかもしれませんが,映画の予告編のようなものだと見なしてください.ソフトの場合は,自らを開発に駆り立て,鼓舞するためにそうしてします.RIETAN-2000の場合は,リリースする3年も前からホームページで空騒ぎを繰り広げていました.いつまでたってもリリースしないので,狼少年(中年?)と見なされていたにちがいありません.そればかりか,リリースする前に何度も解説を書くという臆面のなさでした.一度は,あっと驚くようなソフトを突如としてリリースしてみたいものですね.

12月20日
Windows用RIETAN-2000を更新しました.Visual Fortran 6.6Aでコンパイル・リンクし直し,asfdc中のTl(III)イオンの原子散乱因子を計算するための係数一つを修正しました.

12月25日
ついに単行本の再校を添削し終わりました.これでいくらか時間的余裕ができたので,そろそろMac OS X用のRIETAN-2000をリリースしたいですが,これまでの経験からgccでコンパイル・リンクしたRIETAN-2000が異常終了するという報告を受けました.これも信頼性に欠けているようです.Compaq Fortran for Tru64 UNIX Alpha Systemでコンパイル・リンクすると,元気に動きます.フリーソフトウェアの限界ということでしょうか.残念でなりません.

12月27日
RIETAN-2000の配布ファイル三つをすべて更新しました.粉末回折パターンのシミュレーションに関係した些細な不具合とTl(III)イオンの原子散乱因子を計算するための係数一つ(Windows版ではすでに解決済み)を修正し,ユーザー入力ファイル中で,Cu Kβ特性X線を指定できることを明記しました.Mac用RIETAN-2000(Carbonアプリケーション:rietan2000m_Carbon.tbz)はAbsoft Pro Fortran v7.0のSP1でコンパイル・リンクし直しました.相変わらず"An error occurred while saving the text."というエラーがまれに発生しますが,「RIETAN-2000: Carbon Application」のWebページに記した確実に効き目のある対症療法を見つけたので,今後はこのバージョンだけ更新していくつもりです.Athlon用に最適化した実行形式ファイルは依然としてエラーを引き起こすようです.コンパイラーのバグのためなのは間違いありませんから,今のところお手上げです.